今回ご紹介するのは、2020年春に開校したばかりの宮城県、亘理町にある「ロボ団亘理校」へ通う佐々木さん。
教育用レゴマインドストームEV3の販売代理店である「アフレル」が毎年開催している夏休みロボットコンテストにて、対象が3年生以上にも関わらず、2年生で「応募したい!!」とアイデアを提出、みごと優秀賞を獲得しました!
元々レゴが好きで好奇心旺盛なもねさんと、テクノロジーの身近さや可能性を子どもにもっともっと知ってもらいたい!と情熱を燃やす大町先生の二人三脚で、亘理という町から、才能の芽が生まれました。
■ロボ団に入ったきっかけとコンテストに応募しようと思った理由は?
「学校でチラシが配られていて、行きたいって思った!」(もねさん)
「何か1つは習いごとをさせたかったのですが、自分の時間がなくなるのが嫌だと、何を提案しても拒否されていたんです笑。でもロボ団は自分からいきたいといって!!」(お母様)
入会理由に「子どもが行きたいと言ったから」が大半を占めるロボ団。
大好きなレゴが、タブレットでプログラミングをすることで自分の思い通りに動かせる、というのは、子どもにとって「面白い!」と思えるものなんですね。
通い始めて半年もたたないもねさん、ロボットアイデアコンテストに応募しようと思ったのはどうしてなのでしょうか??
「ロボ団がすごく楽しかったから、もっとやってみたい、自分がどこまでできるか試してみたかった」
と。 すごいチャレンジ精神ですね!!
■優秀賞をとったアイデアはどうやって生まれたのか
ロボットアイデアコンテストのテーマは「新しい暮らし」
何を作って応募しようか、まず、もねさんは
「コロナがはやっているから、コロナで困っている人がよりよい生活を送れるように」
という軸で応募内容を考えたそうです。
そして、3つのアイデアを大町先生にもっていきます。
1つ目は「ハグロボット」。
コロナ感染防止の観点から、おじいちゃん、おばあちゃんになかなか会えない今。
ハグをするロボットを作り、おじいちゃん、おばあちゃんに贈ったら喜んでもらえるのではないか、と考えました。
2つ目は「買い物ロボット」
これは、外出することによるコロナの感染拡大を極力へらすことができるよう、自分の代わりに買い物へ行ってくれるロボットです。
そして3つ目に「ゴミ収集ロボット」
ウィルスが付着しているゴミに触れることでゴミ収集の作業員さんがコロナに感染するリスクがある、ということをニュースで知ったもねさん。ゴミ収集の作業員さんが安心して働くことができるように、と考えたアイデアです。
まだロボ団を初めて3ヶ月のもねさん、
ロボットが「曲がる」と「進む」のプログラミングしか学習していません。
その中でできる範囲は限られています。
大町先生は、もねさんが持ってきた案に対して、プログラミング的観点でどういったものが作れそうかを踏まえ、応募内容を一緒に考えます。
1つ目のハグロボットについては、テレビ電話をしながら使ってもらう場面をイメージ。
押すボタンによってハグや挨拶など、動作を変えるのはどうか、という提案をしました。
抱きつくことに関しては、普段タイヤを回すのに使っているLモーターにアームを取り付ければ抱きしめる動画を再現できること、また、アームに柔らかい素材を取り付ければ、優しさや温もりが表現できるのではないか、と話しました。
2つ目の買い物ロボットについては、上のクラスで習う「色」を用いて行動を操作するロボや、自動デリバリーロボ「DeliRobo」の動画を見せ、もねさんのイメージを具体化していきます。
決済はスマホを使う案も提案しました。
3つ目の収集ロボについては、ゴミのとり方について、持ち上げたりフォークリフト型にしたりなど、Mモーターを使った案を数種類助言してみました。
ゴミを降ろす方法に関しても、ダンプカーのように坂にしていくことで転がし落とすか、初めから斜めになっており後ろ側のドアを開けて落とすようにするかなど、農業用ロボットを参考に紹介しました。
大町先生のアドバイスで、ロボットのつくり、動き、そしてそれを実現するプログラミングのイメージをより具体化させたもねさんは、「ゴミ収集ロボット」を制作することに決めました。
こちらがその作品です
コースは自分が住みたい街を思い浮かべながら、コロナウィルスよりもっと強力なウィルス&細菌が出現した未来にも、安全に働くことができる社会をイメージしました。
ロボット制作でこだわった点は、
「ゴミを回収するアームが引っかからないように、ゴミを乗せる部分を網状にしたこと」
プログラムで工夫した点は
「曲がる向きが斜めにならないよう、まっすぐ曲がるようにプログラミングを調整したこと」
です。
さらに、このミニフィグを使ったプレゼンテーションは、お母さんからの、
「全国にネットで公開される可能性があるため、顔は映らないほうがいいんじゃない?」
という助言と、
「動かす操作をしながら、前を見て話すのが難しいから」
ということから、プレゼンテーション動画をロボットの動画とは別で撮影し、合成する、という方法をとることにしたそうです!
■子どもの好奇心とチャレンジ精神を引き出す、亘理校の取り組みとは??
亘理校で講師を務める大町先生は元々保育士さん。
子どもの成長に向き合う気持ちは人一倍強く、強制的にやらせる教室ではなく、生徒本人自らの学びを見つけて取り組む「アクティブ・ラーニング」な場所づくりを目指しています。
ロボ団のテキストをベースにしつつも、ロボ団が大切にしている
学びが「社会とつながる」
そして亘理校のオーナーが大切にしている
「目的を持った学習」
を実現するため、様々な工夫と勉強をされています。
<亘理校のレッスン特徴>
SNSやマスメディア、日々の生活の中から、様々な分野でどうプログラミングが活用されているのかを情報収集、テキストに記載されているものにとどまらず、より多くの事例を生徒たちに見せるようにしているとのこと。
例えば、「光の性質」を学習するレッスン。
テキストには、カラーセンサーをテーマに「光の性質」を紹介しつつ、光の色の種類や反射について書かれています。
大町先生はテキストに書かれている事例だけでなく、光が生み出す「色」に関連させ、
チームラボが東所沢公園に展示した「どんぐりの森の呼応する生命」や、
アーティストのライブで使用されたプロジェクションマッピングやVR、
花火師職人とコラボした花火の制御
といった、身の回りにある他の例も合わせて子どもたちに紹介します。
また「場合の数」をテーマにしたレッスンでは「パターンを考える」という観点から、
ロジカルシンキングの「MECE法」を紹介。
同じお題でも、人によって異なる観点を捉えるという気づきを伝えています。
例えば、
「ハト(数珠掛鳩)、カモメ、スズメ、ウサギ(フロリダホワイト)」の画像を見せ、分類してもらう。
まず、真っ先にあがるのは「ウサギは鳥ではない」という点。
しかし、「全部、数える単位は”羽”になる」ことや「漢字で書くと一文字である」共通点も見えてくる。
そのうち「ハトだけ名前が2文字」や「スズメだけ白くない」などといった点も見つけ始める。
そこから、「モレなく」・「ダブリなく」考える視点を学習していく。
さらに、これからは自分の考え、意見をきちんと相手に伝えることが大事、と考える大町先生は、生徒達のプレゼンテーション能力向上にも力を入れています。
その取り組み内容が
「ぴんくのだんごむしゲーム」
このゲームは、「お題カード」にかかれている名詞を、「条件カード」に書いてある条件のみを使ってプレゼン、相手に名詞が何かを当ててもらうゲームです。
「卵買ってきて、と頼んで”うずら卵の水煮”を買ってきたら怒りますか?」
と聞かれ、
「うーん、確かに、普通は鶏の生卵だろって思うかも・・・」
「でもうずらの卵も卵には変わりないですよね」
「時間や使える用語に制限がある中、相手に伝わりやすいように、と考えて話すと、自然と優先順位をつけて話すことができるようになるんです。」
なるほどー。
子どもらが、より具体的に、シンプルに、相手に伝わる伝え方が訓練されるんですね!
このように、大町先生は「ピンクのだんごむしゲーム」を時々レッスンに取り入れることで、相手に正確に、伝えたいことを伝えるためにどうすればよいか、を日々考える機会を生徒たちに提供されています。
■ロボ団に通ってみて
「1つの習いごとで様々な力が身につくのがいいですね」
「ミッションがうまくいかない時落ち込んでいたりしますが、どこがいけなかったのか、どうすればうまくいくのかを一生懸命考えている。その結果、大人が思いつかない方法でミッションクリアしたり、面白いロボットを作ったり・・・」
「彼女の意志を尊重し、寄り添うだけでいい、口出しをせず、見守り役であることを大事にしています」(お母様)
プログラミングだけでなく、プレゼンテーション能力や試行錯誤する力、ペアワークで得ることができる協調性、ダン通帳を通じたお金の勉強など、幅広い学びを得ることができることにロボ団の魅力を感じて下さっているとのこと。
また、子どもが失敗しながらも、一生懸命試行錯誤を繰り返している姿を見ると、ちょっと心配になることがあっても安易に口出しをせず、
「子どもを信じて見守っていよう」
と思えるようになってくる。
将来は「お医者さんになりたい」ともねさん
「コロナでたくさんの人がなくなっているから、将来は人の役に立つロボットが作りたい」
アイデアコンテストで賞を取り、地元のラジオや広報誌にも出演しました。
11月に開催されたロボ団の大会、ダンカップにも初挑戦しました。
今後も、たくさんの才能がこの亘理町から開花されていくのが楽しみですね!