2021年、お正月が明け、社会が動き出した1月5日(火)、
重見だんちょーに1本の連絡が入りました。
「視覚障害のある人向けにロボットを作ってる大学の先生がクラウドファンディングをしているんです!期限が明日までなのにまだお金が足りなくて、わたしの話を聞いてくれませんか?」
ロボ団卒業生の伊丹あやのさんです。
※あやのさんのだんちょーへのプレゼンテーションより
だんちょーはその日にあやのさんと会い、あやのさんの熱いプレゼンテーションを受けた直後に役員会で決済、ロボ団としてプロジェクト成立に必要な10万円を寄付することを決断しました。
「プログラミング教室」として「プログラミングを学ぶ場所」として捉えられがロボ団ですが、
「プログラミングの『スキル』」はあくまでツールのひとつ。
社会に必要とされるであろうスキルを総合的に身に付けてほしい、「社会とつながる教育」を提供したい、というのが本来の願い。
あやのさんはそんなロボ団の願いを体現してくれている卒業生のひとりです。
決してプログラミングが超得意、とかロボットがめっちゃ好き!でもありません笑
それでもロボ団を通じて、彼女なりの「夢」を叶える方法(「得意なこと=プレゼンテーション」)を見つけ、未来を切り開こうとしている、あやのさんのストーリーをご紹介します。
あやのさんとロボ団との出会い
あやのさんがロボ団に通い始めたのは7年前。
「色んな経験をしてほしい」というお母さんの強い想いから、そろばん、習字、水泳、英会話から薙刀までたくさんの習い事をしていたあやのさん。
ロボ団もそんなお母様の勧めがきっかけでした。
あやのさんははじめ、あまり乗り気ではなく、
「毎日学童に18時まで行って、学童終わってから習い事に行って。
全部いやいや行っていました。習い事をしていない子が羨ましいなって。」
「毎回人がコロコロ変わるから、緊張するんです」
幸い、ロボ団はあやのさんが通っていた小学校のOPENカレッジという形式で、4人くらいの固定メンバー。
それがあやのさんを安心させ、習い事の中でもまだ楽しいと思ってくれていたようです。
悔しさと喜びをともにする仲間との出会い
あやのさんが5年間、ロボ団を継続できたのは、ロボットが好きとか、プログラミングが特別好き、ということよりも仲間やロボ団への帰属意識を高く持てたからではないか、とのこと。
その背景には、WROやファーストレゴリーグといったロボットコンテストへの積極的参加がありました。
1回目は、ロボ団2年目で、3人チームで出場したWRO日本予選。
大会の途中で電源が切れ、充電できた後もコードの差し込み口が間違っていてロボットが動かず、号泣。
さらに追い打ちをかけるように、そばにいた司会に「これ、コード間違ってるやん」とぼそっと言われたことが、バカにされたように聞こえてとても悔しかったそう。
「こんな経験をしたらもう何も怖くない!」と翌年もチャレンジ。
見事2位を獲得。
さらに3年目は優勝!と思ったら、優勝発表後になんと失格!!に!!
これには保護者含めて納得できず、審判をしていた先生の学校に説明を求めて乗り込んでいったことも。。。
ともに涙を流し、悔しい思いをし、喜びを分かち合う仲間ができました。
人の心を引きつけるプレゼンテーションをしたい!
4回目のWROでは、予選で落ちてしまったあやのさんですが、以前から少しずつ、ロボ団でのレッスンやロボコンでのプレゼンテーションを通じて
「自分はロボットやプログラミングよりも人になにかを伝える、プレゼンテーションが好き」と思いはじめていました。
WROの世界大会でもプレゼンテーションがあることを知っていたあやのさんは、世界大会ののプレゼンテーションを見たいとタイへ飛びます。
そして、国際大会でみた、日本から出場しているあるひとりの先輩のプレゼンに感動します。
「他の人はいくら笑っていても緊張で作り笑いっぽい。でも、先輩は一番ウキウキしていて、一番楽そうに話している。すごい!!」
さらに、
「帰りの飛行機の中でその先輩と隣になったんです。そこでもいろいろ聞いたら、すごくたくさん話してくれて、先輩のようになりたいって思いました!」
その後、プレゼンテーション力向上に特化したロボ団の「チアーズ」プログラムに参加。
自分の考えや想いをみんなの前で話す楽しさをどんどん感じるようになりました。
盲導犬訓練師への興味とロボ団との接続
盲導犬に興味を持ったのは、友達に借りた本がきっかけ。
本の中では盲導犬を連れているおばあさんが車にひかれそうになります。
それを読んで、あやのさんは純粋に
「視覚障がいを持っている人のためになにか自分にできることはないか、どうしたら視覚障がいを持っている人が安全に、楽しく暮らせるんだろう」
と考えます。
あやのさんは盲導犬の訓練をしている人に話を聞きに行きますが、そこで言われたのは、
「盲導犬訓練士はいらない、盲導犬が足りない」
という言葉でした。
盲導犬を育てるは莫大なお金と労力が必要、でも
「ロボ団のロボットって道をプログラミングしたとおりに動く、同じ原理で盲導犬に変わるロボット作れるのでは」
そして見つけたのは大阪市立大学 機械力学研究室の今津講師が開発している、視覚障がい者単独歩行の支援装置でした。
さらにその装置開発のためにより多くの声を集める、体験会実施へのクラウドファンディングを今津講師が行っていることを聞きました。
「盲導犬に興味のある自分ですら、そして自分以上にいろんなことを知っているお父さんやお母さんも知らない、世の中にこの装置を知らない人がたくさんいるはず、もっとたくさんの人に知ってほしい!」
「これまでは自分がロボットを作ってと思っていたけど、わたしはプログラミングやロボットづくりよりも人になにかを伝えることが好き。だから伝えることで、貢献できるのではないか。」
今は目の前にプロジェクトの締め切りが迫っている。
新聞社に取り上げてほしいと手紙を書いたものの、時間がない。
なんとかプロジェクトが成立してほしい、自分にできることはなにか。
あやのさんが起こした行動が、重見だんちょーへの直談判。
チアーズのプレゼンテーション特訓で
「言いたいことを大きく1つ書いて、そこに絵を足したら伝わる」
と言われていたことを思い出しながら、30分でプレゼンテーションをつくり、プロジェクトの意義を伝え、寄付をしてもらうことでした。
母の影響力
「お母さんっていつも困ってる人を助けるんです。例えば、スーパーで荷物を持っているおばあちゃんを見たら車で家に送ってあげたり、妊婦さんが荷物を持っていたら、変わりに持ってあげたり」
「そんな母親をいつも見ていたから、自分も誰かを助けられる人になりたいって思っていました」
あやのさん以上に熱い想いであやのさんの背中を押し、見守り、応援してきたお母さん。
WROで失格になったときも「直談判しに行こう」と行ったのはお母さんでした。
出場できないにも関わらず
「プレゼンテーションをみたい」
というあやのさんをタイに送ったのもお母さん。
盲導犬訓練士になりたい、盲導犬に変わるロボットを作りたい、と言った時に、関連する情報を集め「こんな会社があるよ、すでにロボットを作っている大学の先生がいるよ」と教えてくれたのもお母さん。
「でも絶対に電話をかけてくれたりはしないんです笑。自分で言って会いに行きなさいって笑」
あやのさんからロボ団生へのメッセージ
「私が皆さんに言いたいことは、嫌だと思っても続けることが大切だということです
私はロボ団を辞めたいと思ったことがあります。でも辞めませんでした。
もし、辞めたいと思うこともあれば、その時は1つでよいので、楽しいことを探してみて下さい。
私にとってそれは仲の良い友達が出来たことでした。そのお陰で4年目でやっとロボットを楽しいと思えるようになりました。
今、自分の夢がある人は夢とロボットが結びつかないかもしれません。あるいは今、自分の夢がない人もロボットを習い続ける意味がわからないかもしれません。でもいつか時間を経て何かがきっかけとなり、結びつく時がきます。
私はロボ団を続けていたことで、自分の夢が明確になり今その実現に向かって進んでいます!
夢がある人もない人もどんな形でも良いので続けてみて下さい。
そして少しでも楽しいと思うことを探してみて下さい。必ず自分の力になります。応援しています!!!
「盲導犬の訓練師はいらない」と言われても、ロボットを習っていたから、「盲導犬が足りない」と言われた時にロボットの盲導犬を作りたいと思えた。
ロボ団を習っていなかったら盲導犬の代わりにロボットという発想もなかったし、すでに作っている人がいると知った時に、伝える側になろうということも考えなかった、とあやのさんは話します。
ロボットやプログラミングは一つのスキルにしがすぎません。
社会に出た時に、子どもたちが柔軟に変化に対応できる、自分で課題を見つけ、考え、判断して行動できる人に育ってほしい。
そう願うロボ団一同が年明け一番に聞いたとても嬉しいエピソードでした。