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ICT教育とは?小学校教育でどう導入されるの?

ICT教育とは?小学校でどう導入されるの?

ICTとはどういう意味でしょうか。その正式名称は「Information and Communication Technology」で、日本語にすると「情報通信技術」。よく知られているIT(Information Technology)(情報技術)という言葉に「Communication」(通信)を加えたもので、インターネットを通じて人と人がつながることを意味しています。パソコンだけでなくスマートフォンやスマートスピーカーなど、さまざまな形状のコンピュータを使った通信技術の総称です。国際的には日本で言うITの意味合いも含めてICTという言葉が広まっており、日本でもITに代わってICTという言葉が広まりつつあります。そして今その「ICT」を教育にも導入しようという動きが加速しています。ではどういった形で学校に導入されていくのでしょうか。

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ICT教育とは

文部科学省が発表した「教育の情報化に関する手引き」では「ICT教育」について、様々な提言がされています。その中には「情報活用の実践力」「情報手段の適切な活用」「情報の収集・判断・表現・処理・創造」とあります。

ざっくり言うと「生徒も教師も授業や勉強だけでなく学校生活全てにICTを取り入れましょう」「これからの時代ではICT化がどんどん進むのだから、使い方に慣れておこう」「技術だけでなくモラルやリテラシーも身につけよう」といったことです。

具体的にどのようなものが導入されるかというと、例えばプロジェクタや電子黒板など出力系機器、教科書準拠デジタル教材やインターネット、実物投影機、CD、DVDなどによる教育コンテンツなどの入力系機器、それらの使用を支える学習者用PCや指導者用PC、無線LANといったインフラなど幅広く当てはまります。

また出欠管理など「校務」と呼ばれる業務全般の支援機能を持つ統合型校務支援システムなども含まれます。学校生活のデジタル化といっても良いでしょう。

「教育の情報化に関する手引き」の第5章「初等中等教育における学習指導でのICT活用」では「学習に対する児童生徒の興味関心を高める」「児童生徒一人ひとりに課題を明確につかませる」「わかりやすく説明したり、児童生徒の思考や理解を深めたりする」「学習内容をまとめる際に児童生徒の知識の定着を図る」ために授業の目標に応じて教師がツールを適切に選定し、授業の中でICT機器を効果的に活用することが望まれるとあります。

(参照:「教育の情報化に関する手引」検討素案:文部科学省 (mext.go.jp)

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ICT教育のメリットとは?

ICT教育のメリット。第一に挙げられるのが授業の効率化です。

電子黒板ならば、先生はあらかじめ準備した資料をボタン一つで呼び出せます。次々と別の資料を表示することもできますし、必要であれば翌日でも、一年後でもその資料を表示できます。これはいちいち書いたり消したりしなければいけない今までの黒板ではできません。先生の作業負担が削減されるだけでなく生徒の端末に共有できるので、板書をノートに写すだけで精一杯だった生徒に時間の余裕が生まれ授業内容を理解することに集中することができます。

2つめは勉強の理解を深めることです。例えば理科の授業で習う月・太陽・地球の位置関係。

教科書や黒板での説明ではどうしても平面的になり、理解が難しい児童が一定数出てきます。

しかしコンピュータを使って3Dで説明すると、驚くほどスムーズにイメージを把握できることがあります。さらに時間の経過をスムーズに表示できるので、真っ黒だった新月が少しずつ満月になり再び欠けていく様子を観察することができます。国語なら図書資料の挿絵などを提示して物語の読み取りについて意欲付けを行なったり、算数の立体図形では児童がノートやプリントに描いた見取り図や展開図をプロジェクタで拡大提示して色々な考え方をクラスで共有することができます。

このように画像や動画やアニメーションなどの映像、音声コンテンツなどを使用することで様々な場面で生徒がより興味を持ちやすく、意欲の向上や理解を深めることが期待できます。

また、ICTを活用してそれぞれのレベル、理解度に応じた出題やサポート、指導を行なうなど生徒一人ひとりに合った勉強スタイルに対応することも可能です。

学校ではとても大人しく授業中に手を挙げて答えることなどなかった生徒が、授業にパソコンを導入したことで頻繁に質問メールを送ってきて驚いた、と言う先生もいました。

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ICT教育のデメリットとは?

一方ICT教育のデメリットとして考えられることは、様々な格差が生まれてしまうことです。以前まではICTの整備について各自治体、学校に任せられていたので、整備状況は地域や学校によって格差が生じています。文部科学省ではこの格差を是正するために『教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)』、さらに『GIGAスクール構想』を発表し全国で整備が進められきました。

ICT整備までは政府や自治体、教育委員会、学校側が進めますが、実際に授業を行なうのは学校の先生です。授業をどう進めるかは教育現場の裁量に委ねられるので、先生によってITリテラシーが異なるため教員間で指導力の格差が生じてしまいます。今がちょうどICT教育の導入時期にあるため仕方のないことかもしれませんが、多くの導入事例が報告されノウハウが蓄積されつつあります。IT支援員の配置や研修会や情報共有を通じて少しずつ改善されていくことでしょう。

その他にも、インターネットの長時間使用による健康への悪影響や、すぐにインターネットで調べることによって子どもたちの想像力や考える力が低下するのではないかと危惧する声もあります。

なぜ今「ICT」教育が重要視されているのか

文部科学省は2017年3月に「学習指導要領」を改定しました。その目玉は何と言っても「小学校でのプログラミング教育の必修化」でしょう。

それを推し進めるために2018年に前述の「教育のICT化に向けた環境整備5ヵ年計画(2018〜2022年度)」を発表しました。そして2019年12月に「GIGAスクール構想」を発表しています。

なぜ文部科学省はかつてないほどのペースでICT教育の導入を進めるのでしょうか?

ICT教育・情報教育の目的とその効果は?

AIなどテクノロジーの発達やグローバル化で現在の社会の在り方そのものに劇的な変化が起こると予想されています。将来このような社会でも対応できる人材を育成するために文部科学省はアクティブラーニングの導入を推進しています。アクティブラーニングを効率的に進める背景にあるのがICT教育なのです。アクティブラーニングとは、従来のような受動的ないわゆる「詰め込み教育」ではなく、生徒自らが「主体的・対話的で深い学び」を得る学習方法のことです。自ら積極的に考える力、情報活用能力、価値観の異なる他人と協調しながら自分の意見を発信し行動していく力を養おうとしています。

では「主体的・対話的で深い学び」=アクティブラーニングにおいてICTはどのように生かされるのでしょうか。

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①   情報活用の実践力を育成

情報活用の実践力は大まかに3つに分けられます。「情報手段の適切な活用」「情報の主体的収集と処理」「適切な発信と伝達」です。

「情報手段の適切な活用」とはICT機器の基本的な操作を身につけることです。コンピュータやアプリの起動・終了やキーボードを使った文字入力、データの保存などの基礎的な技能を習得します。

次に「情報の主体的収集と処理」。必要な情報を様々な方法で集め、それを比較・編集し、あるいはグラフ・イラストなどを作成して調べたものをまとめて発表する「調べ学習」ができるようになることです。

「適切な発信と伝達」は受け手の状況を考えて、適切な情報発信をすることです。

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② 情報の科学的な理解を促進

「情報の科学的な理解」は「情報手段の特性の理解」と「自らの情報活用を評価・改善するための基本的な理論や方法の理解」からできています。

「何度送ってもメールが届かない」と思ったら添付ファイルのデータが重すぎた。なんてことはよくあることです。

「データには重さ(容量)がある」という「特性」、「メールに添付できるデータには限度がある」という「特性」を理解すれば「メールが届かない」という問題を解決することができるのです。

そして「自らの情報活用を評価・改善する」とは情報活用を記録し、振り返ることでより良い情報活用力を養うことです。簡単に記録・保存ができるICT機器は学習活動を検証するのにうってつけです。

PDCAのサイクルを意識させながら、さらなるICT活用の学習活動につなげます。

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③   情報社会へ参加する態度を育む

ICT機器を使えば誰でも簡単に情報社会へ参加できますが、それに伴う責任や情報モラルが求められます。

知的財産権を尊重することや、安易に個人情報を書き込まないなど、情報モラルやセキュリティに対する意識や観点を育てることが必要です。

そういった素養を身につけることで初めて、ICTを使ったより良い情報活動が行なえるのです。

ICT教育、日本と海外現状と国際比較

はっきりいうと、日本のICT教育は海外に比べて遅れています。

OECD(経済開発協力機構)の発表した「国際教員指導環境調査(TALIS)2018」によれば日本の中学校教員のICT活用の割合は17.9%。2013年6月に「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定したにもかかわらず、これは調査国の中で2番目に低い数字です。この結果は非常に残念ですが、年々国内の活用事例も増えてきているので、これからは加速度的にICT教育の導入が進むのではないでしょうか。

世界の教育ICT利用率ランキング

OECDの行なう「生徒の学習到達度調査(PISA)」によれば「一週間のうち、教室の授業でデジタル機器を使う時間」のトップ5は上からデンマーク、スウェーデン、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカです。残念ながら日本は最下位です。アジアではシンガポールやタイが好成績です。特にシンガポールは1997年という早い時期に「ICT教育マスタープラン」を作成。2000年代後半には「フューチャースクール」政策を開始し、指定校では1人1台のPC・タブレットが導入されています。

(参照:国立教育政策研究所 OECD 生徒の学習到達度調査 2018)

https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/06_supple.pdf

日本の都道府県別ICT整備・導入状況

 

文部科学省は2019年に「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」を発表しました。この調査研究によると、教育用コンピュータ1台あたり児童生徒数の平均は5.4人/台。およそ5〜6人の生徒が1台のコンピュータを交代で使っているということです。

その中で、トップの佐賀県は1.8人/台と高い普及率を見せました。2位の熊本県・大分県が3.2人/台なのを見ても、これは抜きん出た数字と言えるでしょう。

ちなみに佐賀県は普通教室の大型提示装置(つまり電子黒板)整備率が92%、普通教室の校内LAN整備率が97.1%と全体的に高い数字をあげています。なぜ佐賀県はこれほどICT教育の導入が進んでいるのでしょう。

(参照:学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果:文部科学省 (mext.go.jp)

ランキング1位、先進佐賀県の事例

佐賀県の取り組みを紹介しましょう。2011年に「佐賀県総合計画2011」を策定。その中で「ICT利活用教育」推進を明記するとともに教育庁内に事業推進のための専任組織「教育情報課」を設置しました。課員は要請に応じて学校へ出向し、その学校の状況にあった支援を実施します。また、要請がなくても定期的に各学校へ出向き、学校側の推進リーダーと問題点や改善点を話し合います。多くの自治体ではICT教育の促進には必要に応じて他の課から人員を手配していますが、佐賀県はいち早く専任組織を立ち上げたのです。

4年間の工程で教職員のスキルアップなどの人員育成を行ない、県独自の教育情報システム(SEI-Net)を構築。先生はテスト結果や授業の進行状況の管理、生徒は行事やスケジュールの確認や教材のダウンロードが可能になりました。さらに2012年に県立中学校の全ての児童に1人1台の学習用パソコンを導入。続いて2014年〜2016年にかけて県立高校へも1人1台パソコンを導入しました。

こうした施策が実を結び、「ICTの活用により授業がよくわかるようになった」と答えた児童は81%にも上りました。

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なぜ日本のICT教育は遅れているのか

海外諸国に比べてなぜ日本のICT教育は遅れているのでしょうか。ランキング上位を占める北欧諸国と比較すると興味深いことがわかりました。

ひとつは北欧では学習用コンピュータは文具扱いであるということです。鉛筆やノートと同じなので管理は基本的に生徒自身に任されます。当然、コンピュータに触れる時間は長くなります。ところが日本ではあくまで「教具」であり学校や教員側が管理することがほとんどです。授業中に使う実験道具と同じで使い終わったら棚の中。とても親しみがあるとは言えません。校内SNSなどの双方向コミュニケーションサービスが充実していることも北欧諸国の特徴です。学校・生徒に限らず保護者も参加することで、学内学習と家庭学習をよりスムーズにしています。

そして一番の違いは学習の進め方の問題です。

北欧諸国では副読本や教師が独自に作成した教材の利用頻度が高く、先生が課題を説明した後は生徒たちが自ら議論やレポートをするという進め方が一般的です。この方法はICT機器と相性抜群です。与えられた資料だけでなく、自ら資料を集め比較検証することができます。

一方日本の学習は教科書主体で進められています。教科書を元に先生が授業進行のシナリオを作り、それに子どもたちが答えるというやり方が基本です。これではICT機器が入り込む余地はほとんどありません。旧来の教育方針の中ではICT機器は「必要なもの」ではなく「なくてもなんとかなるもの」だったのです。これではICT教育の導入が遅れるのもやむを得ません。

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ICT教育の最新トピックス

新型コロナウイルスの影響で、ICT教育の現場は驚くほどの進展を見せました。

手探りながらいくつかの学校ではリモート授業が行なわれ、「1人にパソコン1台」「全教室に高速インターネット回線」といった「GIGAスクール構想」の実現が急ピッチで進められました。2021年3月の速報値では、3月中に全自治体のうち97.6%で納品が完了する見込みだそうです。インターネットの整備が完了するといよいよ全国ほぼすべての小中学校で1人1台の端末が使える環境が整うこととなります。

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ICT教育関連ニュース

文部科学省は2020年12月に「GIGA StuDX推進チーム」を発足し、ますますICT教育に力を入れるスタンスを見せています。さらにデジタル教科書の導入や入試に関するオンライン面接の是非など、ICT教育に関するニュースは日々アップデートされています。

十分な議論や実証研究が必要なのはもちろんです。しかし佐賀県の事例のように、先んじることでより良い結果が出る場合もあることを忘れてはいけません。

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ICT教育関連論文

「アクティブラーニングにおけるICT活用の動向と展望」 大山牧子・松田岳士

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/42/3/42_42166/_pdf/-char/ja

「デジタルで変貌する世界の教育と日本の課題」 藤田哲夫

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/10556.pdf

「諸外国におけるICTの活用と学力の関連」 赤堀侃司

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/32/3/32_KJ00005126126/_pdf/-char/ja

 

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