はじめに
子どもの自立。それは子育て中の多くの親にとって大きなテーマです。まだ小さい我が子も、いずれ親元を離れる時がやってきます。一般的に、親より子どものほうが長生きをするので、いつまでも親がサポートできるわけでもありません。子どもは自分の足で立ち、自分の人生を歩んでゆく必要があります。いわば子育てのゴールは、「子どもの自立」であるといえます。この記事では、子どもが自立するというのは具体的にどういう状況なのか、またそのゴールに向けて親が意識したい4つの約束を紹介します。
自立とはどういう状態を意味するの?
では、そもそも自立とはどういう意味でしょうか。広辞苑には、自立の定義として「他の援助や支配を受けず、自分の力で判断したり身を立てたりすること」と記載されています。他者のサポートや干渉は受けずに、自分の頭で考え、行動し、生計を営むということですね。ただ、「他者のサポートを受けない」というのは本当に可能なのでしょうか。我々大人でも、誰にも頼らず、ひとりきりで生きていくことは難しく、周囲の人たちに支えられながら生活しているのではないでしょうか。
東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一さんは、自立についてこのように語っています。「『自立』とは、依存しなくなることだと思われがちです。でも、そうではありません。『依存先を増やしていくこと』こそが、自立なのです。」
熊谷さんは、脳性麻痺という障害を持ちながら小児科医として活躍し、現在は東京大学先端科学技術研究センターで障害と社会の関係について研究している方です。「自立」と「依存」というのは相反する言葉のように思いますが、実はそうではなく、自分の頭で考え、行動する中で、一人でできないときや困ったときに誰かに対して「助けてほしい」と声をかけられること、それこそが自立ということです。自分自身で、人生のコントローラーを持ちながら様々なことを決定し、自己の責任において行動していくこと、その上で必要に応じて誰かの助けを借りることは両立するのです。
自立心のめばえ
自立のテーマでよく語られるものとして「自立心」という言葉があります。自立心とは、子ども自身が何をしたいのか、どんなふうにすればいいのかを考え、決定し、自らの意志で伝えること、また自ら行動することを指します。親の指示や影響ではなく、自分で「これがしたい!」と選択や判断をすること。この場面は幼い頃から頻繁に見られるものです。生後数ヶ月の赤ちゃんであっても、「触りたい」「やってみたい」という自らの意志に基づいた行動を度々目にします。とくに、2歳ごろになると親の働きかけをとにかく拒否する「イヤイヤ期」という時期があります。自我が芽生え、自立心が大きくなってきたころで、自立に向けた大きな一歩となります。これまで親に服を着せてもらったり、ご飯を食べるのを手伝ってもらったりしていたのに、それらに反発し、自分で何でもやりたがったり、かといって自分ではうまくいかないので余計イライラしたり・・・。
親にとってはなかなかハードな時期ではありますが、これも子どもが成長している証といえます。その頃は、自分の中にあるモヤモヤや欲求を上手く言葉で表現できないため、かんしゃくや「イヤ!」という一言で様々なものを拒否してしまいます。この言葉にならない感情を「そっか、嫌だったんだね」と、周りの大人たちがただ受け止めてあげることが、「自分の気持ちをわかってくれた」という安心感や自己承認に繋がってゆきます。
実は、このイヤイヤ期が訪れるのは、脳の前頭前野がすごいスピードで発達しているためだといわれています。前頭前野は、「脳の中の脳」とされ、記憶することや感情や行動をコントロールすること、判断すること、アイデアを出すことなど、人間らしく生きるために非常に重要な器官です。
2歳頃は、まだ前頭前野が未発達であるため、自分の欲求をうまく抑えられません。この時期は、我慢する力や感情や行動を適切に抑える力が育っていく、まさに発達途上の段階だと捉え、その成長を受け止め、支えることが大切です。とはいっても、親も一人の人間ですから、子どもの爆発した感情を受け止めきれなかったり、こちらも一緒にイライラしてしまったりすることもありますよね。ぶつかりながら、親も子どもも一緒に成長していく時期なので、ネガティブに感じてしまうご自身の感情も受け止めてあげてくださいね。
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自立心を育むとどんないいことがあるの?
自立心が育った子どもには、以下のような特徴があります。
・自分のことが好き、自分自身を丸ごと認めている
・周りの人を大切にし、自分から関わっていくことができる
・自分の頭で考えながら行動することができる
・失敗を恐れずチャレンジができる
自立心が育った状態とはどういうものなのか、一つずつ紹介しましょう。
■自分のことが好き、自分自身を丸ごと認めている
いわば「自己肯定感が高い」状態です。自己肯定感の提唱者である臨床心理学士の高垣忠一郎氏によれば、「『他人と共にありながら自分は自分であって大丈夫だ』という、他者に対する信頼と自分に対する信頼」のことを指します。
自己肯定感に関する調査や研究は多数行われており、とくに関心を集めたのは、2011年度に財団法人日本青少年研究所が行った日本・米国・中国・韓国の4カ国の高校生を対象とした調査です。
「私は価値のある人間だと思うか」との問いに、「全くそうだ」と答えた高校生の割合は、米国57.2%、中国42.2%、韓国20.2%であったのに対し、日本はわずか7.5%でした。「まあそうだ」を含めても、日本は36.1%であり、70~80%あった米中韓3カ国と比較しても、著しく低い結果となりました。
一方、小学4年生〜6年生、中学2年生、高校2年生を対象とした別の研究では、自己肯定感は学年が上がるにつれ、低くなる傾向がわかっています。自己肯定感が「高い」または「やや高い」割合は、小学4年生で61.4%であるのに対し、高校2年生では27.6%と大きな差が見られました。また、日本の子どもたちの自己肯定感の低さは、「自分が役に立つ人間かどうか」が影響していることがわかりました。役に立つ人間でないと存在価値がないと思ってしまう傾向にあるようです。
実は、自己肯定感には2つのタイプがあります。ひとつは、「条件付き」の自己肯定感です。これは、「クラスで一番足が速いから自分のことが好き」「勉強ができるから好き」といったような、他者との比較や他者からの評価により自信を得ている状態です。
この自信とは、誰かと比較して自分はここが優れているから価値がある、といった相対的な自信のことを指します。また、他者に褒められる、認められる自分は素晴らしいのだと、という他者という「観客」を必要とする自信のことだともいえます。どちらも他者より優れていないと、もしくは他者に認められないと成り立たない状態で、なにかが起こるとすぐに揺らいでしまい、自己否定に繋がる可能性がある、脆い自信です。
2つ目は、「無条件」の自己肯定感です。いいところも悪いところもあるけれど、自分はこれでいいのだ、こんな自分が好きなのだ、という絶対的な承認です。自分が自分であることが素晴らしい、と丸ごと自分自身を受け止めている状態です。他者の評価や他者との比較は必要とせず、相対的な自信ではないので、少々のことで揺らぐことはありません。
真の意味で自立している人は、この無条件の自己肯定感が高い状態だといえます。プラス面もマイナス面も含めて自分のことが好きで、価値のある人間だと認めている、それが人格形成の土台にあるのです。
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■周りの人を大切にし、自分から関わっていくことができる
1つめで挙げた自己肯定感が高く、自立心が備わった人は、自分のことを大切にするだけでなく、他者を尊重することができます。自分とは異なる意見も「そう考えているんだね」と受け止められるため、争いごとが起こりにくく、人間関係を円滑に構築することができます。また、自分の軸をしっかりと持っているため、他人の意見に流されすぎてしまったり、他人との境界線を超えて強く依存してしまったりすることなく、適度な距離感を保ちながら、人と関わる力があります。さらに「自分のことが好き」「友だちが好き」という自己や他者への承認がベースにあるため、「嫌われたらどうしよう」と過度に恐れることなく、積極的にコミュニケーションを取ることができるでしょう。
■自分の頭で判断し、行動することができる
自立心を育んだ人は、自分はどんな人間で、何が好きで、どんなときに幸せを感じられるのか、をよく理解しています。これまでの人生で、自分の心の声や価値観と向き合ってきたためです。人から言われたことをそのまま鵜呑みにすることなく、自分の頭で考えることや選択することを大切にし、それに基づき、人生のさまざまな場面で独立した意思決定ができるようになります。自分の選択や行動に責任を持っているので、たとえ失敗したとしても「誰々に言われたから」と他人を言い訳にすることはありません。
将来、自分一人の力で生計を立て、経済的に自立していたとしても、これができるひとはそう多くはありません。進学先を選ぶとき、仕事やキャリアを選択するとき、友だちやパートナーといった人間関係を構築するとき、自分の価値観や判断基準、目標に「のみ」基づいて選択する、というのはそう簡単なことではないでしょう。皆さんにも、親だけでなく、友人や同僚、世間など様々な「部外者」の声に翻弄されてしまったという経験はないでしょうか。また、一旦は選択したものの、他者と比較することで、自分の選択に自信がもてなくなったという経験はないでしょうか。
人生は、いわば「数々の選択の結果」だといえます。ときに、他者の声に耳を傾けることが必要な場面はありますが、ここぞ、というときは自分の信念に基づいて、行動できる。自立心が育った人は、自分の人生に責任が取れるのは自分だけだということをよく理解し、自ら人生を切り開いていくことができるといえます。
■失敗を恐れずチャレンジができる
自立心がある人は、自分の能力や可能性に自信を持っており、新しい挑戦に対して前向きです。たとえうまくいかなかったとしても、それを失敗だと捉えず、あくまで成功への途中経過であり、学びや成長の機会として受け止めることができます。
人生には、うまくいかないことが多々あります。その度に「これは自分のせいではない」、と環境や他者に責任を押しつけたり、反対に「自分はだめな人間だ」と過度に自分を責めたりしてしまうと、それ以上前に進むことができません。また、他者の期待や評価を気にしすぎると、挑戦することそのものが怖くなってしまいます。
心理学の用語で「レジリエンス(resilience)」という言葉がありますが、これは「回復力」や「弾力性(しなやかさ)」という意味です。ストレスがかかる状況や困難な出来事に遭遇したときに、完全に心が折れてしまう人と、多少ダメージを受けてもまた立ち上がれる人がいます。その違いは何によって生まれるかというと、このレジリエンスの高さが影響します。自立心を備えた人は、逆境や困難に立ち向かうだけでなく、うまくいかなくても再び立ち上がれる「打たれ強さ」があり、これは変化が激しく予測困難な今の時代において、強く必要とされる力です。
親が意識したい、自立心を育むための4つの約束
日本でも成人年齢が18歳となり、いまや高校3年生でも法律上は「大人」ということになります。子育てをしていると、毎日をこなすだけで精一杯になりますが、子どもはあっという間に大きくなってしまいます。その短い期間で、子どもの自立心をどのように伸ばせばいいのでしょうか。自立心の育成には親の関わり方がキーポイントとなります。ここでは、子どもが自立心を育むために親が意識したい4つの約束を紹介します。
1.親と子どもの課題を分離する
2.自己決定する機会を多く持つ
3.他者と比較せずそのままの子どもを承認する
4.多くの失敗を経験させる
一つずつくわしく解説していきましょう。
1.親と子どもの課題を分離する
これは、大ベストセラーとなった「嫌われる勇気」でおなじみの心理学者アルフレッド・アドラーが提唱する概念です。簡単に言うと、自分がコントロールできる課題と他人がコントロールする課題を分け、他人の課題には踏み込まない、というものです。
ここでいう「課題」とは、目の前にある問題や取り組もうとする事柄のことを指します。親にとっては家事や仕事、育児。子どもであれば、学校の宿題や習い事、友達関係など、誰もが多くの課題を持って生きています。誰の課題かを考えるときのポイントは「この課題の責任を負うのは誰か?困るのは誰か?」と問うてみることです。
親心から、自分が子どもにしてあげられることは何でもしたい、という人も多いでしょう。ただ、アドラーは「親子こそ課題の分離が重要」といいます。宿題になかなか取り組まない子どもに何度も声をかける、子どもが忘れ物に気づく前に、ランドセルをチェックしてリコーダーを忍ばせておく、学校に遅刻しないように子どもの準備をすべて整えておく・・・。これらは子どもの課題であって親の課題ではなく、他人の課題に土足で踏み込んでしまっている可能性があります。
もちろん、まだ自分ではうまくできない子どもにサポートが必要となることはありますが、子どもの課題に踏み込みすぎると、本来自分で乗り越えるべき課題を子どもが乗り越えられなくなってしまいます。また、そもそも子どもがその課題を「自分の」課題だと認識できなくなってしまう恐れがあります。
親が境界線を超えて子どもの課題を取り上げてしまうのではなく、自分と子どもの課題はなにかを分けて考え、子どもが自分の課題を自力で解決できるよう支援していくことが大切です。その積み重ねが、自分の頭で考え、行動し、それらに責任を持つ「自立心」を育むことにつながるでしょう。
2.自己決定する機会を多く持つ
人生や進路を主体的に選択し、自分の足で人生を歩んでいくためには、「自己決定力」が必要です。自己決定力とは、自分の頭で判断して決める力のことです。人は、一日に35000回もの意思決定を下していると言われています。「今日のランチは何を食べるか」「階段で行こうかエスカレーターで行こうか」などといった日常の小さな選択から、進路やパートナー選びなどの人生に深く関わる大きな決断まで、様々な「決定」を繰り返しています。その意思決定の積み重ねが、自己決定力を育んでゆきます。
自己決定力は、まだまだ幼い3〜4歳頃から身につくといわれています。3〜4歳というのは、自我が芽生え、自分のやりたいことや好きなものがよりはっきりしてくる時期です。自己決定力を育むには、小さい頃から、自分で選び、決断できる機会をたくさんつくってあげることが大切です。反対に、子どもの自己決定の機会を周囲の大人が奪ってしまったり、子どもの判断を待たずに一方的に決めつけたり、子どもが決めたことを否定してしまったりといった妨害をしてしまうと、子どもが自分で決めるということをやめてしまいます。自己決定力を育てるチャンスを失ってしまうということです。
子どものうちに自己決定力が育てられないとどうなるのでしょうか。自分で何も決められない、また自分の判断や決定に自信をもつことができない大人になってしまいます。自分の「軸」がなく、常に周囲の期待や評価を気にして、それに応える行動を取らないと不安になってしまうのです。これでは、真の意味で自立しているとはいえません。自分の人生であるにも関わらず、他人にコントローラーを渡してしまっている状態です。
1で触れた「親子の課題を分離する」にも関連しますが、子ども本人が関わることはできるだけ自分で決めさせる機会を増やしましょう。「今日はどちらの服を着ようか」「どのおかずから食べようか」など、子ども自身による小さな決定の積み重ねが大切です。
必ずしも選択肢から選ぶ必要はなく、難しい場合は「わからない」や「どちらでもいい」といった曖昧な答えでも構いません。また、ことあるごとに「あなたはどう思う?」「どうしてそう思ったの?」と答えのない問いも投げてみましょう。
答えられるかどうかは別として、子どもが自分の感情や考え、価値観に目を向けるきっかけとなりますし、思考するトレーニングにもなります。なにより、親が子どもを「子ども扱い」することなく一人の人間として尊重し、考えを聞く姿勢を見せることで、子どもが安心して自己決定をしやすくなるのです。
神戸大学の西村教授らが行った幸福度に関する研究によれば、「健康」と「人間関係」に次いで、「自己決定力の高さ」が人の幸福度に大きな影響を与えていることがわかりました。自己決定は、所得や学歴以上に人の幸福感を左右しているという結果には驚きです。
自己決定によって進路を決定すると、自分で選び取ったという責任感があり、その目標に向かって努力も怠らないため、自己肯定感も高まるといわれています。人生で起こる様々なできごとに対し、誰かに干渉されることなく自分で選択・決定を積み重ねていくことが、幸せな生き方につながってゆくのです。
ここで注意したいのは、自己決定の機会を多く持つというのは、なんでもかんでも子どもの自由に任せるということではありません。大人が子どもの言いなりになるということでもありません。雪がふる寒い日に「半袖を着ていく!」と息巻いている子どもには、風邪を引くので、やはり長袖を着て貰う必要がありますよね。親から見ると譲れない部分はあるので、この3つの選択肢ならどれを選んでも受け入れられる、というものを用意したり、子どもが選択できる範囲を予め決めておいたりといった工夫も必要となるでしょう。
3.他者と比較せずそのままの子どもを承認する
「よくないのはわかっているけれど、やめられない」ものの一つとして、子どもを他の誰かと比べてしまうことが挙げられます。我が子を大切に思うあまり、他の子との発達の差が気になったり、できることの違いに目を向けてしまったり・・・。「Aちゃんは3級なのにうちの子はまだ5級」「お兄ちゃんがこの年齢の頃はもう言葉を話していたのに」と同年齢の子どもたちやきょうだいなど、比較対象はさまざまです。
しかし、子どもを比較することによる弊害は大きく、人格の形成にも影響を与えるといわれています。何度も比べられることで、まず、子どもが自分のことを他者と比較して「できる」か「できない」かで見るようになってしまい、そのままの自分を受け止められなくなってしまいます。そして、常に周囲からの期待や評価を気にするようになり、段々と自分のものさしで物事を判断することが難しくなってしまうのです。自己肯定感や自己決定力が失われた状態だといえるでしょう。
一方、他の誰かではなく、以前のその子自身と比べるのはまた違った意味があります。結果ではなくプロセスに目を向けて、取り組む姿勢や工夫、集中力などを過去のその子と比べ、変化を伝えることで、あなたのことをよく見ている、大切に思っているということが子どもにも伝わるでしょう。どんなところが成長したか、どんなことができるようになったのか、ちょっとした変化はないか、など注意深く見守ります。
絶対的な味方である親から、「あなたはあなたのままでいいんだよ」「そのままのあなたが素晴らしいんだよ」という無条件の愛をたくさんもらった子どもは、自信をもつことができます。そして、子ども時代に自分のことを無条件に肯定できる、認められる経験を積み重ねることが、自立心を育み、これからの人生を歩む上で大きな支え(土台)となります。
4.多くの失敗を経験させる
自立心がある人の特徴にあった「失敗を恐れずチャレンジする、失敗しても立ち直り再びチャレンジできる」というレジリエンスを養うためには、小さい頃からたくさんの失敗を経験する必要があります。「転ばぬ先の杖」ということわざにあるように、親が先回りして子どもが困らないように、失敗しないようにと何でもサポートすると、いつしか子どもは自分がやらなくても親が助けてくれる、ともするとこれは自分の課題ではない、と学習してしまいます。
子どもたちは失敗や試行錯誤を経験したとき、どうやったらうまくいくんだろう、次はこうしてみようか、というように、実に多くのことを学びます。もちろん、危険なことや失敗すると取り返しがつかないことは親がサポートする必要があります。一方、子どもが自分ひとりでできることは手を貸さず、さらに一人でできることを増やしていくよう働きかけていくことが重要なのです。
おもちゃの片付けや学校の準備、宿題など「子ども自身の課題」はもちろん、食べた食器を流し台まで持っていく、洗濯物を自分のタンスにしまうなど、身の回りのことや簡単なお手伝いの中にも、多くのチャレンジする機会が隠れています。
親がやるほうが早く楽なので、ついつい口出ししたり先にやったりしてしまいがちですが、そこをぐっとこらえてみましょう。大人になって揺るがない自信を持つ人は、これまで失敗をしてこなかった人ではなく、たくさんの失敗を経験し乗り越えてきた人です。なぜなら、これまでできなかったこと、やったことがなかったことが成功したときに、人は大きな自信を得ることができるからです。
脳科学者の成田奈緒子さんは、子どもの失敗経験と自立について以下のように話しています。「自分でできることは自分でさせ、子どものうちにたくさんの『困る経験』をさせる。その中で、必要なときに『助けてください』と言えるようになること、そして助けてもらったら『ありがとう』と伝えること。それが、本当の意味での自立へとつながる。」
子どもたちが失敗しないように、傷つかないように、お膳立てして助けてあげるのではなく、子どもたちが失敗したときに、叱らず、「大丈夫だよ」と伝えて安心させてあげること。そして助けを求めてきたときに適切なサポートをしてあげること。また、次はどうすればうまくできるかを一緒に考えてあげること。これらが自立心を養うために大切なのです。
子どもにとって、失敗は成長できる最大の機会であり、その貴重な経験を親が奪ってはいけません。幼い頃にたくさんの小さな失敗を経験した子どもは、失敗を恐れずチャレンジし、うまくいかなくてもへこたれない強い芯を育てていきます。だからこそ、「やればできる」と自信を持ってどんな困難も乗り越え、自分の力で未来を切り開いていく力を身に着けられるのです。
まとめ
子どもたちがわたしたち親と過ごす時間は、短いとたった20年程度となります。親と離れたあとに歩む人生のほうがずっと長いということです。親元を離れてからのその道程は、うまくいかないことのほうが多いかもしれません。だからこそ、どんなことがあっても「わたしはわたしでいい」という自分への信頼を土台として、困ったときに周りの人を頼れる強さをもってほしい。そして人生の岐路に立ったときに、自分自身が納得できる選択肢を選び取り、決めたその道を自分の足でしっかりと歩んでいける力を身につけてほしい。そのために、親としてできることはなにか、また敢えてしないことはなにか、を考えておきたいですね。
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