小学校入学までにどのような学習をさせようか、どのように幼児教育を受けさせたらよいのか悩んでいる親御さんは多いかと思います。
「何度注意や説明してもわかってくれない」「ウチの子少し理解が遅いんじゃないかしら」など子育ての悩みは尽きません。でも大丈夫。子どもの認知機能の発達とは個人差はあれど普遍的な順序で発達すると言われています。ポイントは子どもの成長段階に合わせた適切な向き合い方。今日は子どもの思考発達段階について解説していきます。子どもがどのように成長するかを知ることで余裕をもって向き合うことができると思います。ぜひ参考にしてみてください。
20世紀最も影響力が大きかった心理学者の一人「ジャン・ピアジェ(Jean Piaget)」
ジャン・ピアジェ(Juan Piaget)という名の心理学者をご存知でしょうか?
スイス出身のピアジェは「20世紀で最も影響力の大きい心理学者」と言われ、特に子どもや幼児の成長段階における認知発達理論・教育学の分野で大きな功績を残しました。ピアジェが登場する以前は、子どもたちは「不完全な人間」「動物と人間の間の生き物」であり「大人が正しい答えを提示し、導いてやらないといけない」と考えられていました。それに対して彼は「発生的認識論(genetic epistemology)を提唱、自らの子ども達を含む多くの子ども達を観察し、「自ら考え、試行錯誤ができる」「トライアンドエラーを繰り返し、答えを導き出せる」存在として捉えました。
子どもたちは情報や経験が足りないだけで、大人になんら劣ることのない、れっきとした人間であるという見方を唱えたのです。
世界3大 発達段階説のうちのひとつ「発生的認識論」を提唱
3大発達段階説とはエリクソンの「心理社会的発達理論」、フロイトの「リビドー発達段階理論」、そしてピアジェの「発生的認識論」と言われています。エリクソンは自己の発達を、家族や恋人といった他者や社会との関わりを通して論じました。フロイトは性的なエネルギーや欲望を「リビドー」名付け、成長段階にリビドーがどのように処理されたかという過程によって人格が形成されると考えました。そしてピアジェは子どもたちを「観察と実験」を繰り返し、段階を追って知識を獲得してくことができる科学者のような存在であると論じたのです。
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スイスの心理学者ピアジェの生涯
ではジャン・ピアジェについて詳しく紹介していきましょう。
生物学に興味を示した早熟な幼少期
1896年、ピアジェはスイスのフランス国境に近い街ヌーシャテルで生まれました。ピアジェの理論の底を流れる哲学的な思考は、大学の文学教授である父と敬虔なプロテスタントである母によって育まれました。
また、スイスの誇る深い森とヌーシャテル湖に魅了されたピアジュは生物学に興味を持ち、特に軟体動物の研究はのちの学位にも繋がりピアジェの未来を切り開く原動力になっていきます。
10歳で書き上げたシロスズメについての論文
いかにピアジェが早熟だったかを示すエピソードとしてよく語られるのが「10歳にしてシロスズメについての論文を書き上げた」という話です。実際その「論文」は用紙1枚、100語にも満たない「自由研究」のような物で、掲載されたのも博物館の会報のような物でした。そのことは彼自らによって冗談めかして語られています。しかし、この「論文」がピアジュの残した膨大な量の論文の出発点であることは間違いありません。
「(10歳の時……)公園で、一部分だけ白い雀を見つけたので、1ページばかりの分量の論文をヌーシャテルから出ている博物雑誌におくってみた。なんと、その雑誌は、わたしの論文をのせてくれた。こうしてわたしは“デビュー”したのだ。」(「自伝」1952年)
ヌーシャンテル自然史博物館での非常勤助手
中学校に入学したピアジェはヌーシャテル自然史博物館で週2回の非常勤の助手を務めることとなります。そこで彼に大きな影響を与えたのが軟体動物学の師であるポール・コデ(1836-1911)でした。コデは分類学者でありながらも敬虔なキリスト教徒であり、科学的視点と信仰心を併せ持つ人物でした。自然を知り、分類して命名することは神の教えに近づくことだったのです。
ここでもピアジェは科学と宗教の葛藤というテーマを深く考えることになりました。
19歳でヌーシャンテル大学動物学科を卒業
19歳でヌーシャテル大学の動物学科を卒業したピアジェは「ヴァレの軟体動物学序説」で理学博士号を取得。その後、住み慣れたヌーシャテルを離れ、チューリヒに向かいます。
生物学と認識論を結ぶ付ける心理学への関心
そのころのピアジェの関心は生物学を通して心理学へ移っていました。チューリヒに移ったのも臨床心理学を学ぶためです。
その後さらに研究を続けるためパリに移ることになるのですが、そこでの出会いがピアジェを児童心理学や認知発達の道へと導くこととなります。
ジャン=ジャック・ルソー教育研究所の所長就任と大学教授への従事
ヌーシャテルからチューリヒ、そしてパリへと流れる中で、ピアジェは生物学だけではなく哲学、宗教教育、精神病理学や精神分析など様々な学問を修めていきます。そしてジュネーブ大学心理学実験室長であるクラパレードの招きに応じてジャン=ジャック・ルソー教育研究所の所長に就任します。第一次世界大戦の傷跡と緊張が残るヨーロッパにおいて、中立国であることを貫き通した上、もともと他言語国家だったスイスは優秀な学生が集まり活発な学術活動がありました。そこに設立されたジュネーブが誇る「思想の偉人」ジャン=ジャック・ルソーの名を冠した研究所(現在のジュネーブ大学心理学教育科学部)では「教育の中心を教師から子供達へ移す」という目的のもと実験的な教育が行われ、ジュネーブの臨床心理学の名声を確固たるものにしました。また、ピアジェは地元ヌーシャテルだけでなくローザンヌ大学やチューリッヒ大学、パリ大学でも教鞭を取り、主に児童心理学講座の教授を務めました。
3人の子どもの知的発達を観察
1924年に結婚したピアジェは、続く1925年に長女ジャクリーン、1927年に次女ルシエンヌ、1931年に長男のローランを授かります。そしてピアジェは3人の子ども達の行動を2年間にわたり観察し続けます。研究者にとって観察対象としての乳児を、しかも3人の男女を得ることはとても幸運で刺激的なことであり、その研究を大いに進めることとなりました。そしてそこに、初期のピアジェの心理学研究に研究員として参加していた夫人・ヴァランティヌの大きな協力があったことは言うまでもありません。
ちなみにピアジェ生誕100周年を記念して開催された学会にはゲストとして3人の子供達が参加。父親の研究を通して自分たちの子供時代が世界中に知れたことについて「深い意味でとても良い家庭であったし、とても良い父親であったので、何の問題も感じたことがない」と答えました。
研究者としてだけでなく、家庭人としても優秀だったピアジェを物語るエピソードです。
発生的認識論国際センターをジュネーブに設立
心理学研究と並行して科学哲学、科学史の研究を続けていたピアジェは「(人間は)どのようにして物事を理解するのか」という「認識」を科学的、生物学的に論じる「発生的認識論序説」を刊行します。これまでのピアジェの研究の総決算とも言えるものでした。そしてさらなる研究のため、自らの専門である哲学・心理学だけではなく、論理学や物理学・数学など異なる領域との横断的研究が必要だと考えたピアジェは「発生的認識論国際センター」をジュネーブ大学に発足させます。このセンターでピアジェは数学的なアプローチを使った研究など、これまでよりも多面的・多角的な研究を行いました。残念ながらセンターはピアジェの死の5年後に閉鎖されますが、このセンターはピアジェの幸せな「学問の園」であったようです。
エラスムス賞を受賞
1950年代の終わり頃、海を挟んだアメリカでピアジェのこれまでの功績が再評価され始めました。著作は24か国語に翻訳されその勢いは20年後、絶頂を迎えます。
1972年、76歳を迎えたピアジェはエラスムス賞を受賞します。この賞はヨーロッパの文化・社会に貢献した人物や団体へ贈られる賞で、スイス人として受賞したのはピアジェが初めてです。発達心理学におけるピアジェの功績が莫大なものであることは疑う余地はありませんが、この受賞によってまさにピアジェは「歴史に名を刻んだ」と言えるでしょう。
ピアジェが提唱する「発生的認識論」の4つの思考発達段階という概念
ピアジェが提唱する認知発達の理論は「知識は外界から与えられる」のではなく、「子どもと環境との相互作用を通じて自ら構築する」というものです。子どもが環境との相互交渉を通じて、生得的に持つ反射やシェマが「同化」と「調節」作用によってシェマが精緻なものとなるのだそうです。言い換えると、新しい事象に子どもが初めて接したとき、自分がすでに持っている知識に当てはめようとします(同化)。新しい事象が自分の持っている知識に当てはまらない場合、自分の知識を変形させて理解しようとします(調節)。これらを繰り返して、新たなシェマを構成していきます(均衡化)。子どもたちは科学者のように自分で試行錯誤しながらあらゆる事柄を理解できるようになっていくのです。
そのような認知の発達をピアジェは感覚運動期・前操作期・具体的操作期・形式的操作期の4つの段階に分けました。子どもたちは段階的に知識を構築していくと考えたのです。
ピアジェの発達段階① 0~2歳 感覚運動期(sensorimotor stage)
感覚運動期では、対象への働きかけと感覚そのものが思考を構成します。動作とそれに対するリアクションのみで構成されるこの時期は、人生において最も創造的といわれる時期です。この時期には、循環反応・対象物の永続性・シンボル機能という3つの認知機能が発達します。赤ちゃんが自分の手や足、ガラガラや積み木など目の前にあるものに触れたり、口に入れてみたり、叩いたりして対象物を把握します。例えばガラガラを何度も揺らすことで(循環反応)、「揺らす」という枠組み(シェマ)を形成します。そしてその「揺らす」という枠組みを他のものにも当てはめてみます。積み木を揺らし液体の入ったコップを揺らします。揺らせば音のなるおもちゃは鳴らない積み木より面白いようですし、コップから水が零れ落ちるのはおかしくてたまらないようです。赤ちゃんは生後間もない頃だと「いないいないばあ」で大人が顔を隠してしまうといなくなったと思いますが、成長と共に顔を隠しても大人がそこにいると認識できるようになり、「いないいないばあ」を喜んでくれるようになります(対象の永続性)。さらに成長とともに、物事をシンボルとして捉え、実際のリンゴとリンゴのイラストを見てどちらもリンゴだとわかるようになります(シンボル機能)。
1歳くらいになると相手の表情に自分の表情を近づけたり、聞こえた声をまねて発声してみたりします。もう少し大きくなると相手の動作を記憶して模倣する延滞模倣も見られるようになります。
この時期は、言葉や数字など知識を暗記させたりするより、スキンシップなど周りの人からの働きがけが重要です。
ピアジェの発達段階② 2~7歳 前操作期(Pre-operational stage)
保育園や幼稚園に通う子が多い前操作期になると、イメージや言葉による思考が可能になります。この時期は自分の視点から世界を見ている(自己中心性)ので、相手の立場になって考えることがまだ難しい年齢です。自分が楽しいことは相手も楽しいという風に考えています。そのせいで喧嘩になることもしばしばありますが、そういったトラブルを経験することで徐々に「他者の目線」を獲得していきます。この時期の子どもたちは絵本の世界など想像と現実の区別がつきにくく混同する傾向が見られます(実念論)。また、ぬいぐるみや人形を相手にごっこ遊びをして楽しむのもこの時期です(アニミズム)。この行動もぬいぐるみや人形の視点を通して周りを観察し「他者の目線」を獲得するための練習段階といえます。また多くの場合はぬいぐるみや人形に対して自分は「上位の存在」である保護者のような役割を演じ、ルールを定めるといった大人たちの模倣を行います。
2~4歳 象徴的思考期(symbolic function substage)
前操作期は、2歳~4歳を「象徴的思考期」、4歳~7歳を「直観的思考期」に分けられています。
象徴的思考期ではもののイメージを頭の中に作り上げて保存し、そのイメージをあとで使うことができます。例えば、目の前に車がなくても車の絵を描いたりすることができます。母親など大人の発言や行動を真似たりしたがるのもこの時期です。
4~7歳 直観的思考期(intuitive thought substage)
象徴的思考期に比べ、概念化が進んで物事を関連付けたりして理性によって考えることができるようになってきます。しかし、まだ論理的に考えるほどには至らず直観的な考え方が特徴です。たとえばコップに入ったジュースを口径が違うコップに移し替えた場合、口径を考えず水面の高さが変わると量が増えた(減った)と思い込む様子が見られます(中心化)。この段階に進むと自らの考えた直感的な答えと事実の不一致がおこるので、その差を埋めようとするための質問が増えます。
ピアジェの発達段階③ 7~11歳 具体的操作期(concrete operational stage)
具体的操作期になると思考に論理性がともなうようになります。見た目に惑わされず筋道を立てて考えられるようになります。重さ・長さ・距離など数的概念も理解できるようになります。コップに入っているジュースを口径の違うコップに移し替えても量は変わらないということが理解できるようになります(保存性の習得)。知覚的に目立つ属性(水面の高さ)によって量を判断していたのが、「何も加えたり減らしたりしていない」「水面が高くなったけれど細くなっている」など論理的に考えるようになるのです。物を操作し体験する経験を重ねながら、状況把握の正確さが増し、時間の流れがわかるようになると因果関係が理解できるようになります。見た目に惑わされないということは具体性から抽象性への架け橋です。時間や空気、気持ちのように目に見えないものの存在を意識することで、抽象的な物事を理解する準備をしているのです。この頃から自己中心的な考えからコミュニケーション能力が発達し共感力が身に付いたことで、他人の立場や気持ちを考えて発言や行動ができるようになり、自分の行為がどういった結果を招くのかを考えることができるようになります。
ピアジェの発達段階④ 11歳~ 形式的操作期(formal operational stage)
11歳頃になると具体物がない事柄についても頭の中での思考が可能になる形式的操作期に変化していきます。抽象的な知識や概念が理解できるようになってきます。これまでのように自らの経験によってだけでなく、想定した判断をもとに論理的に結果を考えることができるようになります。例えばいろいろなパターンを予測し、体系的に調べて判断するなど仮説を立てて推理を行うことが可能になります。この段階まで来ると抽象的な事柄に対してのアプローチができるようになるので、哲学や数学など様々な新しい世界が広がっていきます。
発達段階に応じたロボットプログラミング教室「ロボ団」
子どもたちはただ受動的に知識を習得するのではなく、本来自分自身で試行錯誤して納得し答えを導き出す力を持っています。
この力を育むのにぴったりなのがプログラミングです。
2020年小学校での必修化に伴い人気が高まっているプログラミングですが、教育用のプログラミングとは子どもたちが自発的に学ぶためにコンピューターを使ってサポートできないかと時間をかけて開発されたものなのです。
プログラミング教育が子ども自身で能動的に考える力を育みます。
プログラミング教室「ロボ団」のカリキュラムは、子どもの発達段階に沿って組み立てられています。
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4~7歳の直観的思考期で始めるのにぴったりな「ロボットプログラミング」
直観的思考期には、パソコンの画面上ではなく目の前のロボットの動作でプログラミングを直観的に体感することができる「ロボットプログラミング」が最適です。目に見えないプログラムで動くロボットがなぜ動くのかを空想ではなく理性で考えられるようになるのを促します。スターターコース、ベーシックコースでは教育版レゴ®マインドストーム®EV3を使用し、論理的思考力の基礎を養います。
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7~11歳の具体的操作期から獲得し始める「論理的思考」
直観的思考期から訓練し、具体的操作期から「論理的思考」の実践、「抽象的思考」へのアプローチを行うのがアドバンスコースです。今までの学びを活かしてさらに高度なロボットプログラミングに挑戦します。
11歳~の形式的操作期から始める「プログラミング言語」
具体物がなくても思考が可能な形式的操作期に入ると、ビジュアル言語からプログラミング言語へと移行し、複雑なプログラムを組み立てられるようになります。プロコース、マスターコースではいよいよプログラミング言語Pythonでのプログラミングに挑戦。Pythonとは「facebook」や「youtube」、AI(人工知能)などでも採用されている注目の言語なのです。
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子どもの発達段階に沿ったプログラミング教室「ロボ団」に少し興味がわいてきたら、ぜひ気軽に参加できる体験教室に参加してみてください。